teng1954のブログ

定年後に世界1周旅行。再就職・・・終活かな

天愚の汗だく駄句

前回は友人たちの病気の事を書いたが、実は同じ日の夕刻にあった出来事も書いておきたい。写真は近所の「海蔵寺」の桜、もう散り始めている。海蔵寺には芭蕉の句碑「身を捨に登る虫あり高燈籠」がある。

夕方の銀座線は大混雑だった。風雨が強くなったせいかもしれない。朝に天気予報を聞いて大きな丈夫な傘を持って出て正解。

混雑する地下鉄に乗って、吊革を掴む。すると、前に座っていたフードを被りダブダブの防寒コートを着た人が立ち上がった。そして”どうぞ”と手招きしたのだ。あれ?外国人の少年かー?足元には旅行用のコロコロがあった。けっこうな美少年。

私は「けっこうです」と言ったが、座ろうとしないので好意に甘えた。キャップを被ってマスクもしているのに、老人と分かってしまうのか。ま、耳あたりの白髪を見て察したのだろう。

外国人で同じような光景を見た記憶が蘇る。日韓ワールドカップの日本での第1戦カメールVSアイルランド。新幹線で新潟へ。同じ車両にアイルランドの大応援団がいた。にぎやか過ぎる程だったが、日本人の老夫婦が車両に入って来た時に一斉に立ち上がったのだ。席の譲り合い。老夫婦は驚くばかり。でも良い光景。そんな事を思っていた。

地下鉄の混雑が一瞬なくなった。隣に先ほどの美少年が座った。フードをはずすと、なんと女性だった。20歳くらいかな。そんなに混みもせず下車する駅に。改札に、その女性がいた。降りる駅が同じとは、奇遇。出口も同じだった。

駅の地上に出ると風雨が激しい。フードを被っただけで信号を走って渡って行った。私も同じ方向だ。交差点を渡ると、彼女が雨の中で立ち止まっている。気の毒なので、傘をさしかけて「ホエア アー ユー ゴー?」と訊く。

私の顔を見て、席を譲ったお爺さんだと分かったようで、「オー」と笑顔。

彼女は「〇△▢・・・カリフォルニア」と応えた。私の発音が悪いので「どこから来たの?」と聞こえたのかな。もう一度、ゆっくり尋ねる。「〇△▢・・・・」分からない。すると自分の髪を指して「ヘアサロン」と言う。

旅行用コロコロを持って同じ出口なので、我が家の隣のマンション兼ホテルの所かと思ったのだが違った。そこなら送っていけるのに。ヘアサロンなど見たことはあるが、店の名前は知らない。

私は小さな折り畳み傘を、いつも鞄に入れているのを思い出した。15センチ程の物だ。「私はもう1つアンブレラを持っているから、プレゼントする」と言う。鞄が深くてなかなか取り出せない。すると、彼女が傘を持ってくれた。やっと取り出して彼女に渡すことができた。すぐに、その場を離れてしまった私。

失敗だ。雨の中で傘をコジ繰り回している。傘を開いて渡すべきだったが遅い。なんとか傘をさしたのを遠くから見て、ホッ。

エスコートに慣れている人なら、相合傘で店まで同行するだろう。傘を渡すだけでも開てからだよなあ。やはり私はモテるわけがない、と自嘲した次第。

家に帰って、傘をあげたことを妻に報告。笑って「いいことしたね。また傘を買いましょう」と言ってくれた。良かったー。

※駄句

 席譲る異国娘に春光る(天愚)